現代を生きる我々が人間らしくいるために、 文化的な喜びを未来につなぎたい ――
株式会社横浜DeNAベイスターズ
代表取締役社長
木村洋太

県民ホールやKAATと同じ関内エリアに本拠地をもつ横浜DeNAベイスターズ。野球ファンにとどまらない集客を誇る球団が、コロナ禍であらためて見据えた「業界をリードする」思いについて、代表取締役社長の木村洋太さんに伺いました。

聞き手・文 : 編集部 写真 : 菅原康太

──2021年4月に代表取締役社長に就任され、どのような1年でしたか?

チームの成績とビジネス、いずれも厳しい1年でした。コロナ禍以前は、入場料とグッズや飲食による収益が5割を超えていたため、昨年は赤字も抱えて。逆に仕組みを見直すチャンスと捉え、社内で議論もできました。大切にしたのはチャレンジングスピリットです。行政とともに、収容人数の規制緩和に向けた技術実証にも取り組みました。新型コロナ対策も徹底しました。選手・スタッフのPCR検査、特に外食に関する制限は厳しいものでしたが、皆が「絶対にこの球団から陽性者を出さない」という思いを共有してくれて実現できました。

─チームにとって、無観客試合はどのようなものでしたか?

試合前からイメージしていたものの、いざ始まってみるとスタジアムの暗さに驚きました。物理的な光の反射や印象の問題かもしれませんが、選手も張り合いがなかったと思います。無観客が5千人になっただけで色合いが変わり、半数(※1)になった時の光景の違いも経験しました。いまだ渦中といえるなか、すぐに満員御礼に戻るとは考えていません。球場が安全だと思っていただける対策を取り続けること、また来たいと思える満足度を高めることの両軸で、プロ野球の魅力をあらためて伝えていきたいです。

収容人数約半数で開催した試合のスタジアム ©YDB

─スポーツや芸術文化は“不要不急”の存在として、様々な制限がありました。

文化的な営みは、人が人らしく生きていくために必要なことだと、あらためて認識するきっかけを新型コロナが与えてくれたともいえます。現代を生きる我々が人間らしくいるために、文化的な喜びを未来につなぎたい。2021年に更新した会社のビジョンの一つに「100年先へ、野球をつなごう」があります。野球が日本に上陸して約150年が経ち、競技人口の減少や少子高齢化によって、このままでは野球文化が廃れるのではという危機感がありました。そうならないために、ベイスターズが業界全体に、国内のみならず世界的にもリーダーシップを発揮することを目指します。

※1

横浜スタジアムの収容人数(キャパシティ)は約34,000席(2022年1月現在)。

木村洋太[きむら・ようた]


2007年東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了。同年、米系経営戦略コンサルティングファームに入社。2012年株式会社横浜DeNAベイスターズに入社。その後、事業本部チケット営業部部長、経営戦略・IT戦略部部長、執行役員事業本部本部長、取締役副社長を歴任。2021年4月より現職。

横浜DeNAベイスターズ 公式サイト

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