大山エンリコイサム展 夜光雲

神奈川県民ホールギャラリー

大空間に
大山エンリコイサム
過去最大級の
黒と白の世界がひろがる

大山エンリコイサムと禅

 大山エンリコイサムは、自身の作品制作について次のように語る。

 「エアロゾル・ライティングでは、スタイル化された文字が構成する『名前』が、かき手のアルターエゴとなる。そこから文字を取り除き、流れる線のみを抽出・反復し、ダイナミズムを最大化することで、抽象的なモティーフが再構成される。私はそのモティーフを『クイックターン・ストラクチャー(QTS)』と名づけた。そして、このQTSは、連続する時間からこぼれ落ちた一回性の痕跡でもある」 。

 今回の展示構成は作家とともに次のことが可能か考えた。それは、神奈川県民ホールギャラリーの5室1300㎡という広大な空間において、最小のマテリアルの量で展示ができるかということである。そこで、この可能性を探るにあたり2019年11月の冷たい雨の降る中、靴の中に水が染み込むのを感じつつ、禅宗寺院の建築や庭園を研究するために鎌倉五山である建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄明寺を訪れた。そして、2020年8月には、大山と筆者の念願であった京都を訪れ禅宗の寺院を中心とした庭園を取材することができた。初日は、南禅寺と青蓮院門跡(しょうれんいんもんぜき)、2日目は京都五山の相国寺、建仁寺、東福寺、萬寿寺。さらに大徳寺大仙院と龍安寺、最終日には五山の第一位である天龍寺を訪れた。これら禅寺などと枯山水などの石庭を巡る取材をし、極小という構造について話し合った。

 曹洞宗の開祖道元の弟子にあたる懐奘が記した『正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいぼうき)』にある「只管打坐(しかんたざ)」、その意味はとてもシンプルに、ただ座ること、余念を交えずただひたすら座禅をすること、である。

 この境地で展示室に臨むことができるか、大山と筆者の課題は続く。

文・中野仁詞

  (神奈川県民ホール・ KAAT神奈川芸術劇場 学芸員)


大山エンリコイサム展 夜光雲

2020年12月14日(月)〜2021年1月23日(土)

*休場:12月17日(木)、24日(木)、28日(月)、1月7日(木) 

    年末年始〔12月30日(水)~1月4日(月)〕

11:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで

神奈川県民ホールギャラリー

料金:一般800円 学生・65歳以上500円 高校生以下無料

*障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

*KAAT EXHIBITION 「冨安由真展|漂泊する幻影」の有料チケット半券を  

 お持ちの方は100円引きとなります。


Photo

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #175, 2017

Acrylic aerosol paint, sumi ink and graphite on unstretched canvas

(H)304.8cm x (W)243.8cm

Artwork ©Enrico Isamu Oyama

Photo ©tokyomodernstyle

kanagawa ARTS PRESS

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