知れば、知るほど、好きになる「ファンファーレ」「三味線」

音楽の小箱

ファンファーレ

 式典や競技会の幕開けを告げ、高揚感をもたらしてくれるファンファーレ。その語源はアラビア語の「anfár(トランペットの意)」といわれます。

 中世の十字軍遠征で中東からもたらされたトランペットは、金管楽器の中でも鋭い響きで敵を威圧する効果に優れていました。そんなトランペットを王侯貴族たちは「権力の象徴」として扱うようになります。彼らは、自分たちの入場を知らせるために、トランペットの長いベルに家の旗を下げさせ*、吹奏させるのを常としました。楽譜で残る古いファンファーレの名曲、オペラ最初期の傑作モンテヴェルディ「オルフェオ」の冒頭では、ティンパニを伴う5本のトランペットが華麗な吹奏をしますが、これはオペラの内容とは関係なくモンテヴェルディが仕えたマントヴァ公の来場を知らせるためのものでした。

 18世紀の市民革命の時代を経てファンファーレは王侯の専有物ではなくなり、さまざまな祝祭的な場のため、あるいは管弦楽曲の一部として作られるようになります。

 それらの中には、金管楽器の改良も相まって、より多彩な楽器編成、より凝った構成のものが数多くあります。例えば1984年 ロサンゼルス・オリンピック開会式で演奏された「ファンファーレと主題」では、金管・打楽器に木管・弦楽器を交えた大管弦楽による壮麗な楽曲で、作曲を手掛けたジョン・ウィリアムズはこの作品でグラミー賞に輝きました。

 咋年は残念ながら東京オリンピック2020の新作ファンファーレを聴くことはできませんでしたが、2月のコンサート「共鳴空間(レゾナントスペース)」(神奈川県民ホール)では鈴木優人の新作ファンファーレが披露されますので、ぜひご期待ください。


*このタイプのトランペットは今日でも「ファンファーレ・トランペット」という名でファンファーレの吹奏で用いられています


Photo

1964年東京オリンピック 国会議事堂でのファンファーレ吹奏

写真提供:フォート・キシモト


楽器ミュージアム

三味線

三味線は、和楽器の中でもとりわけ身近な楽器です。そのルーツは中国の「三弦(サンシエン)」。ニシキ蛇の皮を張った胴に長い棹(さお)に渡した弦を爪で弾く三弦は、琉球に渡って「三線(さんしん)」となり、16世紀後半に大阪・堺に伝来したといわれています。

 三線は琵琶より音域が広く、棹にフレットがないので、自由に旋律を演奏でき、弦が胴の皮に共鳴して打楽器のようなリズム効果も出せるため琵琶法師に重宝され、爪ではなく撥(ばち)を用いる、蛇皮ではなく猫や犬の皮を使うなどの工夫を重ねて日本独自の「三味線」が作り上げられていきました。

 三味線は、糸巻きがある天神、棹、胴から成り、長さは1mほど。太さの異なる3本の弦*を伸ばし、胴体を貫く棹の末端にある組紐(根緒(ねお))で留めます。弦と胴の間には弦の振動を皮に伝える駒を挟みます。駒は糸巻のすぐ下にもう一つあり、これは上駒といいます。

 庶民文化が花開いた江戸時代、浄瑠璃や歌舞伎、座敷での語りやうた、各地の民謡など多くの曲種・流派が誕生しましたが、その伴奏をつとめた三味線は、音楽にあわせて音域や音色が異なるさまざまなタイプに改良されていきました。棹を太くすると胴や駒、撥も大きくなり低く太い音を、反対に棹を細くすれば胴は小さく、軽い駒と小さめの撥を使って高く軽妙な音を作るのです。こうして三味線は、大きく細棹(ほそざお)・中棹(ちゅうざお)・太棹(ふとざお)の3タイプに分かれました(曲種によってさらに細かな違いがあります)。

 三味線の一番の特徴は「サワリ」といわれます。これは、弦のうち一番太い一の糸のみ上駒を通さずに、わざと棹に微妙に触れさせて「ビーン」という濁るような音の広がりを作る仕組み。響きの余韻に風情を感じる日本ならではのものです。

*弦はいずれも絹糸で、一番太い「一の糸」は低音域、「二の糸」は中音域、細い「三の糸」が高音域をカバー。西洋楽器のように音の高さが定まっているわけではなく、うたう人の声の高さや弾く状況に合わせて調整(調弦)します。

kanagawa ARTS PRESS

神奈川芸術プレス WEB版