知れば、知るほど、好きになる「オペラ制作の人々」「トロンボーン」

音楽の小箱

「オペラ制作の人々」

 歌劇場の上演予定には新制作(プレミア)と記載された演目があります。その演目のほとんどは新作オペラではなく過去の古典作品。新制作とは、演出家が新たに演出する舞台のことです。

 新制作では、歌手の演技、舞台美術(セット)や衣装などを演出家の構想の下、舞台美術家・照明家・衣装デザイナーらが集結し制作します。上演後は劇場のレパートリーとしてセットや衣装を保管し再演しますが、演出家は舞台に立ち合わず、新制作時の演出助手や劇場の座付き演出家などが再演するのが常。歌手や指揮者はたいてい新制作時とは異なるため、彼らはもとの舞台を尊重しつつ音楽家の演奏解釈の違いなどを考慮し細部を変更していきます。

 リハーサルは歌手の音楽稽古から始まりますが、オーケストラではなくコレペティトゥーアという練習ピアニストが入ります。ピアニストは伴奏はもちろん、音取りから歌詞の発音指導など歌手の作品理解を深める役割を担います。また、オーケストラの練習指揮をする副指揮者がコレペティトゥーアとしてピアノを弾いたり、ピアニストに弾いてもらって歌手を指揮することもあります。実は、オペラの名指揮者の多くがこの仕事からキャリアを始めたのです。彼らは本番時、オーケストラ・ピットの指揮者を補佐して、セット・照明・字幕などの操作スタッフに、音楽と合わせるきっかけを出したり、プロンプターボックス*の小窓から歌手に歌詞や歌い出しの合図などを行ったりもします。指揮者は、こうした音楽スタッフの支えの下でオペラの音楽面の演出家として作品に対する自分の解釈を示し、歌手やオーケストラとともに音楽を創っていきます。

 このように多くの人々が関わる総合芸術、オペラの舞台の進行管理は舞台監督(ステージマネージャー)に託されます。制作スタッフの名前は、公演プログラムに記載されています。目を通してみてください。

*舞台中央の最前部の床下にある小さな空間のこと


イラスト: 舞台上のプロンプターボックスから歌手に合図を出す


楽器ミュージアム

トロンボーン

 西洋の多くの管楽器は年月を経ながら多くの改良を重ねています。しかし「トロンボーン」は古くからの構造をそのまま留める珍しい金管楽器です。

 15世紀頃、トランペットを改良する中で誕生したトロンボーンは、トランペットと同じく息を吹き込む「マウスピース」と管の反対側にある「ベル」に向かって広がる管を持っています。ですが、この楽器の最大の特徴は、この二つの部分の間にある「スライド管」(楽器を構えた時に前に突き出た部分)です。「スライド管」は2本の管をかぶせた外・内管の二重構造で、U字型の外管の内側に沿って内管を抜き差しして音の高さを変えます。最高音は最も手前の外管に内管全てを入れた位置、最低音は腕を伸ばしきった位置になります。

 管の抜き差しというアナログな構造のおかげで、トロンボーンは他の金管楽器よりも音の高さを細かくとることが得意。しかも、音と音の間を途切れることなく連続して変えていくことができます。また、スライド管をすべらせながら吹くとユーモラスな効果音や動物の鳴き声のような音も出せます。

 トロンボーンの音域は成人男性の声域に近く、また荘厳な和声(ハーモニー)を響かせられるため、18世紀には「神の楽器」として教会音楽でのみ演奏されていましたが、ベートーヴェンが交響曲第5番「運命」(1808)で初めてトロンボーンを交響曲に用いて以降、管弦楽やオペラで大活躍。今日ではクラシック、吹奏楽、ジャズ、ポピュラーなどあらゆるジャンルで重宝されています。

 実は、トロンボーンでも、ジャンルによって好まれる管の太さが異なります。クラシックでは大音量が出る太管を、ジャズでは細管を使うことが多いのだそう。そんな響きの違いにご注目を。


イラスト: 標準的なテナー・トロンボーンの管長は約271cm。スライドをテナーより遠くまで伸ばさずに低音が出るテナーバスの他、ソプラノ、アルト、コントラバス等があります

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