知れば、知るほど、好きになる「フリージャズが生まれた理由」「ヴィオラ・ダ・ガンバ」

音楽の小箱

「フリージャズが生まれた理由」

 音楽は世相を映すというが、それはジャズも例外ではない。ルイジアナ州ニューオーリンズで誕生したジャズは、黒人文化とヨーロッパ文化が融合した新しい音楽であり、植民地時代に共存した多様な人種と環境が生み出した産物だった。今も昔もジャズを語る上で大切な即興性をはじめ、この時代に生まれたジャズの主だった要素は、現代に至るまで脈々と受け継がれている。

 ミシシッピ川を渡りシカゴやNYでも隆盛を極めたジャズは、形を変え洗練されながら大衆音楽へと成長。スウィングジャズからモダンジャズへ、酒場のダンス音楽から現代的でお洒落なものへと移り変わっていった。しかしそれは、ジャズが最も華やかだった50年代までの話である。

 数多(あまた)の社会問題による強い不安感と政治への不信感が横溢(おういつ)した60年代の米国は、カウンターカルチャーの成長を助長する要因だらけ。そうしてヒッピー文化、ビートルズやボブ・ディランの奏でるロックやポップスに紛れて静かに生まれたのが、フリージャズだった。飽和状態を迎え、確固たる地位を失い始めたジャズに必要だったもの、それはあらゆる束縛からの解放であり、伝統や秩序の破壊。コード・リズム・メロディ、楽器の奏法すら無視した奇想天外な新しい音楽の創造は、得てして即興を重んじるジャズの純粋性への回帰でもあった。世界が混沌を迎え変化する時、既存のものは破壊され刷新されるのが常だ。

 フリージャズの持つ前衛的な芸術性や精神性は、時に理解の難しいものとして捉えられる。楽しむコツは時間芸術としての音楽を何にも囚われず感じること。頭でっかちになってしまっては勿体ない。今ここに、あるがまま。そんなマインドフルネスな音楽の楽しみ方を提供してくれるのも、このジャンルの魅力である。

文:濱安紹子

*音楽堂アフタヌーン・コンサート 山田和樹指揮東京混声合唱団「合唱 meets ジャズ!」8/23(金)に山下洋輔が登場。詳細はこちら


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日本のフリージャズを牽引する山下洋輔 ©Akihiko Sonoda


楽器ミュージアム

「ヴィオラ・ダ・ガンバ」


 ヴィオラ・ダ・ガンバ(伊語で「脚のヴィオラ(ヴィオール)」の意)は、16~18 世紀のヨーロッパで盛んに演奏された古楽器。その名が示すように楽器の胴体を両脚の間に挟んで構え、弓で弦を擦って奏でます。床に刺して楽器を支えるヴァイオリン属のチェロによく似ていますが、ギターに近い楽器です。

 羊腸(ガヅト)の弦は、通常ギターと同じ6

本(ヴァイオリン属は4本)。調弦もヴァイオリン属の5度に対してギターと同じ4度です(中央の1か所は3度)。指板にはフレットがあります。

 本体はチェロよりも厚く、なで肩、裏板は平らです。本体中央で弦を支える駒は、ヴァイオリン属よりも平らで、ひと弓で同時に複数の弦に触ることができます。駒の両脇にある響孔はヴァイオリン属の「f」ではなく「C」の形です。

 音域の異なる複数のサイズがあり、メインは音域の高い方からトレブル、アルト、テノール、バスと充実しているため、ガンバのみの合奏(ガンバ・コンソート)も可能です。

 弓は、馬のしっぽの毛でつくられ、掌(てのひら)を上に向けて下から木部と毛を支えて持ちます。

 ガンバの誕生はヴァイオリン属より早い15世紀末。ルネサンス、バロック時代もっとも普及した楽器の一つとして、王侯貴族のたしなみとして、また教会などで演奏されました。しかし、18世紀末頃から、大きな演奏会場で響き渡る華やかな表現力が楽器に求められるようになると、繊細な響きのガンバは姿を消していきます。しかし、20世紀からの古楽器が再評価されるようになり、ガンバも復活を遂げ、今日では多くの奏者や楽器製作者が活躍しています。


イラスト:弦長は、独奏楽器として使われるバスで約70cm、テノールは約60cm、アルト約50cm、トレブル約40cm。弓の長さは75~77cmほど

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