大きな作品を1個見せるより、
小さな作品で視座をつくっていく
今春、神奈川県立近代美術館鎌倉別館で個展「重力と素材のための図鑑」を開いた岩竹理恵さんと片岡純也さん。
平面に立体と絶妙なコラボレーションを見せる二人のユニットに、個展のことや子どものワークショップについてお聞きしました。
聞き手・文 : 村田 真 写真 : 加藤 甫
─美術館での個展は初めてだそうですが、どうでしたか?
岩竹
面白かったです。今回は美術館のコレクションと組み合わせだったので、いつもと違う制作の着想が得られました。特に日本美術の、掛け軸や屏風みたいな独自の形式とか構造に興味がわきました。
個展の時はよく4章に分けます。最初は身の回りの「ささやかな気づき」から始まって、第2章が「日常と風景」。第3章は「身体の見立て」で、これは「内包される風景」と呼んでいるシリーズ。第4章は流動する「宇宙観」でミクロとマクロの入れ子状態を意識してます。で、また日常に戻って1章から4章まで循環するような展示を構成しています。
片岡
私たちは展示する時、作品を1個ガツンと見せるのではなく、小さな作品で視座をつくっていくやり方をしています。
―子どもが喜びそうな作品ですが、子ども向けのワークショップはあまりやらないんですか?
岩竹
今回はやってほしいと言われました。東京都現代美術館でやったのが初めてです。片岡さんの作品は子どもとおじさんと猫が集まってきます(笑)。
前に横浜の黄金町で子どもアトリエを手伝ったことがあるけど、メチャ面白かったですね。特に5歳くらいの子がマスキングテープをピタッと貼って「道になったよ」と。テープが道になったというのが大発見なんです。そういう瞬間に立ち会えたのはよかったです。
片岡
大きくなるとだんだん先生が喜ぶようなものをつくろうとか思うようになりますね。
—でも子ども向けはやろうとは思わない?
岩竹
片岡さんは日々そういう子どもみたいな発見をしています。
片岡
おれのが面白いぞって思っているし(笑)。
岩竹
神奈川県立近代美術館鎌倉別館でのワークショップの時は子どもが混じっていてすごくよかったです。私たちは身の回りのものを使うので、知ってるものが知らないものになるという感覚があって、それを子どもはワーッて言葉に出してくれるんです。大人たちは黙っているだけだから、子どもが混じっている方がいいんです。

撮影 : 髙橋健治
片岡純也+岩竹理恵 Junya Kataoka + Rie Iwatake
身の回りのささやかな出来事を再現するキネティック作品と、印刷物から想像を展開した平面作品を組み合わせている。
現在、BankART1929と協働しヨコハマポートサイド地区のプロジェクトで街のリサーチを行いながら、みなとみらいのシェアスタジオExPLOT Studioで制作している。