神奈川県民ホール presents
カナガワ ポトガラヒー
出張浅田撮影局| 開成編・真鶴編

県民ホールが休館中にめぐる神奈川県33市町村でのプロジェクトの一つ、「カナガワ ポトガラヒー」。写真家の浅田政志さんが神奈川県内を旅しながら、地元の人たちとともに、“神奈川の今”を撮影するプログラムです。2025年は開成町と真鶴町で実施され、12月に写真展を開催。モノクロ写真に手作業で着彩する「横浜写真」を手がかりに、撮影が行われました。

取材・文 : 編集部
写真 : 菅原康太(*を除く)

「カナガワ ポトガラヒーの旅のはじまり、はじまり」。
浅田政志さんの「演出写真」を通してみる、まちの日常

神奈川県は、日本の写真発祥の地の一つ。その地で、幕末から明治にかけて横浜で行われていた技法を応用し新たな試みを展開する浅田政志さん。幕末の写真師の気持ちに寄り添いまちへ出かけ、地元の人々と出会い、ともにつくり上げる旅をスタートしました。プロジェクト名の「ポトガラヒー」とは、写真が日本に上陸した当時のフォトグラフィーの呼び方です。

2025年の舞台となったのは開成町と真鶴町です。まちの産業や伝統的な仕事の風景、音楽や踊りのチーム、酒屋に集まる人々、子どもが遊ぶ様子などからシーンをつくり、各10枚を撮影。写真展のオープニングお披露目会では、被写体となった人々を中心に地元の人たちが集まり、浅田さんとともに撮影をふりかえりました。

町制施行70周年を迎えた開成町の会場は、町役場1階の町民プラザです。「浅田さんとお話しして、実際にまちを見ていただくなかで、被写体を選んでいただきました」と山神裕町長。

地元の人たちは、撮影時に「浅田さんから細かく指示があった」と明かします。被写体とコミュニケーションをとりながらポーズや配置をつくり、時には一緒にかけ声を出して盛り上がりながら、時間をかけて一枚の写真をつくり上げていくのが、浅田さんの手がける「演出写真」の特徴です。

一方、真鶴町の会場は元寝具店で現在は空き店舗の「たけや」。撮影のコーディネートに携わったのは真鶴で生まれ育ち、アートプロジェクトなどを手がける平井宏典さんです。下校中の子どもを大人たちが双眼鏡で見守るワンシーンは、浅田さんが真鶴の人たちの世代を超えた交流やその目線に着目したことから生まれました。

平井さんは「ポーズもガチッと決めて、演出が強いのだけれど、なぜか自然な感じがする。真鶴の空気感と合っているなと思いますね」と話します。

真鶴町の「たけや」での展示風景。右手にある作品が、下校中の子どもたちを見守るシーンを写した作品
*写真 : 木村雅章

地元の人たちと、そのまちらしさをつくる。
たった一枚の写真に込める思い

浅田さんが撮る写真の妙味は、そこに暮らす人や風景、そのまちらしさが一枚の写真にぎゅっと凝縮されているところ。浅田さんは、「被写体の皆さんが自分たちらしいと思える作品を、一緒につくりたい」と話します。

「撮る前にみんなでお話しする時間が大事。一人ひとりが何をするか、どんな表情でいるかを細かく設定しますが、その出発点は皆さんがいつもやっていることなんです」

今回、真鶴町に移住して8年目の映像ディレクター・松平直之さんが撮影現場に密着したアーカイブ映像を、本展の公式サイトに公開しています。浅田さんが地元の人たちとやりとりを重ねながらシーンをつくっていく様子を、ぜひご覧ください。

真鶴の人たちと撮影をふりかえる浅田さん。海と山の文化が混ざり合う真鶴のコミュニティーが感じられる展示に

まちの再発見であり、アーカイブ。
「神奈川の今を生きる人々」と出会い、撮ること

浅田さんがカメラを持って知らないところに行き、そこで暮らす人々に出会い、その暮らしぶりを知る。そうして生まれていく作品は、まちの新しい見え方を提案しているようでもありました。

神奈川のプロジェクトだからこそ、昔の「横浜写真」のようにモノクロ写真に着彩する方法をとっているという浅田さんは、「着彩のいいところは、注目してほしいポイントやカラーにすべきところだけに色が塗れること」だと言います。実は、服や空の色が実際とは異なっている写真もあり、地元の人たちもできあがった写真を見て、「また違った雰囲気が感じられて面白い」と話していました。

そして、浅田さんはこう続けます。

「今ある写真も時が経つと見え方や必要性が変わってくる。だから、その時生きている人たちの貴重なアーカイブになるんじゃないかなと思いながら写真を撮っています」

浅田政志さん

「写真家 浅田政志 トーク&中井編作戦会議」レポート

今後、浅田さんが訪れる候補としているのは神奈川県西部に位置する「中井町」です。中井町ではどんなシーンを撮影するのでしょう? 真鶴町でのオープニングお披露目会終了後、浅田さんとスタッフ一行は「写真家 浅田政志 トーク&中井編作戦会議」へと向かいました。

会場となった「なかい里都まちCAFE」には、10人ほどの町民が集まりました。なかには戸村裕司町長の姿も。始めに浅田さんが、写真家としてのこれまでの活動を紹介しました。続いて、すでに撮影を行った開成町と真鶴町で撮影した写真を見せながら、まちの人から話を聞いたり、自分で歩いたりして撮影場所や被写体を決めたプロセスを共有します。

中井町の地図が書かれたボードを広げながら、町民が次々と情報を書き込んでいく“作戦会議”が始まると、「厳島湿生公園は外せない」「先日の火事ではレトロな消防ポンプが活躍した」「このカフェにはおじさんたちが野菜を持ってきてくれる」「テルモ湘南センターは中井とは思えないきれいさ」などと、町民の発言は途切れません。浅田さんも「調べてもなかなか出てこない情報が出てきますね」とうなりました。

自然豊かで、里山の風景が広がる中井町。どんな写真が撮影されるのか――。ご期待ください!

「“中井ならここは外せない”というシーンを教えてほしいんです」と浅田さん
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