山本理顕(建築家)

美術館があることで横須賀の自然や風土を感じられる。
それが建築の役割

地域コミュニティーとともに建築を捉え、建築における公共性を追求し続けている山本理顕さん。
2025年7月19日〜11月3日に開催された「山本理顕展 コミュニティーと建築」の会場であり、神奈川県内の代表作の一つ「横須賀美術館」について、また建築家として日頃考えていることについて聞きました。

聞き手・文 : 南島 興 写真 : 加藤 甫(*を除く)

─横須賀美術館の個展を拝見しました。展示からはもちろんですが、あらためて美術館があることで横須賀の自然や風土をより一層感じることができました。

まさにそれが建築の役割なんです。今回、自分の設計した美術館で個展を開催できたことは大変光栄なことでした。同美術館では建築家による初めての展覧会で困難もありましたが、横須賀市長の上地克明さんにも協力を仰ぎ、実現できました。設計時には、建設そのものへの反対や博物館法の厳しい制限など、様々な矛盾を抱えながらも、上地さんや当時学芸員だった原田光さんらの尽力によって誕生した、希有(けう)な美術館です。

豊かな緑と海に囲まれている横須賀美術館の「山の広場」からの展望
*画像提供:横須賀美術館

―展覧会は模型と解説を中心にしたつくりで、建築展としてはとてもオーソドックスながら、よい展覧会を観たあとの満足感がありました。

あらゆる芸術活動は社会のルールのなかで行われます。芸術家はそれに従って世界や社会を壊すのではなく、人を幸せにしなければいけないと思っています。展覧会であれば、展覧会の作法に則って表現する必要があります。暴力的であったり、犯罪に近い行為を含むものは、芸術活動としては成り立ちません。ちなみに出品した金属模型は実は接着剤ではなく、はんだづけで制作しているので、それ自体が一つの作品として鑑賞できます。それも満足感の理由でしょうね。

—オーソドックスであることは、権威を尊重することにもつながると思います。

古代の英雄や哲学者がそうであったように芸術活動だけではなく行政、政治においても本来、権威に基づいて行われます。しかし、他者とのつながりを失っている現代社会ではそれが難しい。権威者は他者との関係のなかでおのずと生まれるからです。他者とつながり、ともに生きる一つの方法として私が提唱しているのが地域社会圏※1です。

—「地域社会圏」のようなビジョンをもつにはどうしたらいいでしょうか。

ビジョンをもつことは大事ですが、それをどう他者に届けるのかを考えなければいけません。偉そうに言えば、芸術家や建築家とはそういう職業なんです。建築家ならどうしたら人々を幸せにできるのか、これを考えて仕事をすることが大切です。

※1

「1つの住宅に1家族」というモデルに代わる、多世代・多様な人々が緩やかにつながり、生活に必要な衣食住などを共有・分担する社会のモデル


山本理顕(Riken Yamamoto)

主な作品にGAZEBO、埼玉県立大学、公立はこだて未来大学、横須賀美術館、ザ・サークル チューリッヒ国際空港、名古屋造形大学など。
国内外で公共建築を手がける。
著書に作品集『コミュニティーと建築』(平凡社)など。
2024年プリツカー賞、2025年クリスタル・アワード受賞。

公式サイト


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