「未病」に着目
神奈川県のヘルスケア・ニューフロンティア政策

全国屈指のスピードで高齢化が進むと見込まれる神奈川県。この超高齢社会を乗り越えていくために県が打ち出したのが「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」です。「未病」に着目し、個人の未病改善を推進する取り組みについて、神奈川県政策局 いのち・未来戦略本部室の皆さまにお話を聞きました。「未病改善」と「最先端医療等の追求」の2つのアプローチを融合し、持続可能な社会を目指します。

取材・文 : 編集部

私たちの心身は、どのような状態が健康で、どのような状態が病気なのでしょうか? 実は明確に二分化できるものではありません。疲れがとれない、胃腸の調子がよくない、肩こりがひどい――。そんな病気とまでは言えないけれど、心身が芳しくない状態は、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。このように健康と病気の間を連続的に変化する過程を「未病」と呼びます。東洋医学では古くから考えられてきた概念ですが、これに向き合い、心身を健康な状態に近づけていく「未病改善」がホットトピックとなっています。

神奈川県では、2014年に未病の概念を普及するために「ME-BYO」を商標登録し、2017年にはすべての世代を対象とした「かながわ未病改善宣言」を発表しました。加速度的に少子高齢化が進んでいるなか、“超高齢社会を幸せに生きる”ためには、これまで取ってきた手法で解決していくのは難しい。そこでスタートしたのが「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」という二つのアプローチを融合させた「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」です。2017年には国の「健康・医療戦略」にも、未病の定義が位置づけられました。

日常生活で気軽に取り入れられる未病改善についてInstagramで発信
公式アカウント:@mebyostyle

神奈川県が未病改善として挙げた3本の柱は「食」・「運動」・「社会参加」です。神奈川県政策局 いのち・未来戦略本部室担当課長の長澤未来さんは、この3本の柱について次のように話します。「特に重要視しているのが、社会参加。様々な人と交流をもち、社会とつながることで未病改善を進めていこうとしているところが大きな特徴です。また個人が日常生活に気軽に取り入れやすいよう、未病改善をスタイリッシュに取り入れたライフスタイルを『ME-BYO STYLE』として発信しています」。ヨガインストラクターなどのアンバサダーたちが、SNSなどを通じて、この「ME-BYO STYLE」を広める活動も。

2023年にME-BYO BRANDとして認定された「ベジチェック」(カゴメ株式会社)。
手のひらをセンサーに30秒あてるだけで、簡単に推定野菜摂取量を測れます
ME-BYO BRANDの休養時専用ウェア「リカバリーウェア」(株式会社ベネクス)。ナノプラチナなどの鉱物を繊維一本一本に練り込んだ特殊素材を使用。アスリートから一般の方まで幅広く愛用されています

個々の未病改善とともに、ヘルスケアの分野でイノベーションを起こし、新たな市場産業の創出を図ることにも力を入れています。例えば、未病改善を産業界としても支える「未病産業研究会」。2014年の設立当時の会員数は64社でしたが、現在はヘルスケア関連企業や医療機関、金融業やサービス業、小売業など多様な業種業界から1057社の登録があります。そのなかで未病の改善や見える化につながることが期待できる商品・サービスのうち、特に優れたものを「ME-BYO BRAND」と認定することで、未病産業の魅力を広め、産業化を推進しています。現在(2023年4月)、32のME-BYO BRANDが誕生しています。

さらに「未病」における新たなシステムが、いま神奈川県から世界へ飛び立とうとしています。現在の未病の状態を数値等で見える化する「未病指標」です。2015年度から開催している国際シンポジウム「ME-BYOサミット神奈川」で「未病指標」について議論され、WHOの報告書にも記載されました。

ME-BYO BRANDの無料アプリ「みんチャレ」(エーテンラボ株式会社)。ダイエットや勉強など同じ目標をもった匿名5名でチームを組み、仲間と取り組むことで三日坊主を防止する習慣化アプリ
Share this
Key phrase

Latest Feature

声をとどける——言葉・うた・音楽

「声」 は舞台芸術における一つの重要な表現媒体で...
spot_img

Recent articles

関連記事