2023年上半期の美術プログラムをふりかえる

芸術文化をより身近に、より楽しく感じてもらいたいという願いで、各地の劇場・ホールや美術館、団体は様々なかたちでイベントや展覧会を開催しています。2023年上半期に神奈川県下で開催された取り組みを紹介します。

文 : 浦島茂世(フリーライター)

音楽堂で開催した「音楽堂のピクニック」は、10組のアーティストが、観客と一丸となり、前川國男が設計した音楽堂全体を使ったパフォーマンスを繰り広げる公演です。2回目となる今回の公演では、ステージはもちろんのこと、ロビーやホワイエを使ったパフォーマンスが繰り広げられました。時には音楽堂そのものを叩いて楽器にすることも。鈴木ヒラク+中山晃子+淺井裕介からなるドローイングトリオは、ダイナミックに、時には繊細にステージ上で絵を描き、その手元をカメラで撮影して映像をスクリーンに投影。幻想的な絵柄が生まれる過程が客席からもわかりやすく、大人も子どもも惹きつけられていました。KAATで開催した「KAATアトリウム映像プロジェクト vol.23 |原田裕規」では、劇場のエントランスに広がるアトリウムに、地球上に現存するすべての動物の名前を作家本人が約33時間にわたって朗読する、CGアニメーションと朗読を組み合わせた映像作品が上映されました。

神奈川県下でも、様々なジャンルや枠組みを超えた展覧会が開催されています。茅ヶ崎市にある茅ヶ崎市美術館で開催された「渉るあいだに佇む-美術館があるということ」は、美術館の開館25周年を記念して企画された展覧会。茅ヶ崎市美術館は、茅ヶ崎にゆかりのある作家の作品のみならず、同時代を生きるアーティストたちとともに地域に関連した作品を制作する試みも行っています。地域に芸術家がいること、美術作品があること、つくること、そして美術館があることを来場者とともに考えていく展覧会となりました。箱根町のポーラ美術館では「部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで」を開催。19世紀から現代に至るまでの、部屋にまつわる作品を展示し、ステイホームを経験した私たちに、部屋とは、室内とはなにかを問いかけました。

美術館やホール以外の場所でも美術を楽しもうという流れが広がっています。横浜市西区、みなとみらい21地区に2022年にグランドオープンしたオフィスビル「横濱ゲートタワー」は、2023年3月に「家族で楽しむSDGs×アートイベント」を開催。みなとみらい21地区の歴史やパブリックアートをめぐるまち歩きツアーなど、子どもたちもSDGsとアートをあわせて楽しめるイベントを開催しました。また、現在大規模改修工事のために長期休館中の横浜美術館は、横浜美術館正面のグランモール公園「美術の広場」に面した仮囲いに若手アーティストの作品を掲示。若手アーティスト、浦川大志による50mを超える作品《智能手机ヨリ横浜仮囲之図》は、みなとみらい地区をはなやかに彩る作品として、人々に訴えかけました。

神奈川県下では様々な美術プログラムが開催され、その内容は年々多様化しています。今後もさらに興味深いプログラムが期待されます。

写真:雨宮透貴

子どもと大人の音楽堂〈大人編〉

「音楽堂のピクニック」

音楽堂の様々な場所を舞台に、現代美術家の山川冬樹や川村亘平斎が主宰する楽団「滞空時間」、能楽師の梅若紀彰など、アーティストたちがジャンルの枠を飛び越えて表現を行う、約6時間にもわたる「ピクニック」。音楽プロデューサーのKenji“Noiz”Nakamuraと美術作家の小金沢健人が演出を担当しました。鑑賞者たちは音楽堂のあちらこちらを移動しながらパフォーマンスを楽しみました。


会場 | 神奈川県立音楽堂
日程 | 2023年3月4日
主催 | 神奈川県立音楽堂
公式サイト

写真:松永 勉

 

「渉るあいだに佇む-美術館があるということ」

地域と美術館の関係をあらためて見直し、考えるための展覧会です。萬鉄五郎や速水御舟、井上有一など、茅ヶ崎にゆかりのある芸術家の作品と合わせて、茅ヶ崎の子どもと大人たちと機械がつくり上げた作品、茅ヶ崎のゴミでつくられた作品、美術館を訪れた人々や周辺に暮らす人の声を集めて構成された作品など、美術館開館後に生まれた作品も展示。来館者とともに美術館の過去や未来に思いをめぐらせました。


会場 | 茅ヶ崎市美術館
日程 | 2023年4月8日〜6月11日
主催 | 公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団
公式サイト

写真:山中慎太郎

New Artist Picks: Wall Project

「浦川 大志 | 掲示 : 智能手机(スマートフォン)ヨリ横浜仮囲之図」

長期休館中の横浜美術館は2007年より若手アーティストを紹介する展覧会「New Artist Picks」を定期的に行っています。「New Artist Picks: Wall Project」はこの展覧会の特別編。2回目となる今回は、浦川大志による新作を美術館を覆う工事用の仮囲いに掲示しました。横浜美術館や中華街など、この地域ゆかりのモチーフがふんだんにちりばめられた5枚からなる連作は、全長で50mを超える作品となっています。


会場 | 横浜美術館前仮囲い
日程 | 2022年11月14日〜2023年7月31日
主催 | 横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
公式サイト

写真:加藤 健

 

「部屋のみる夢 -ボナールからティルマンス、現代の作家まで」

19世紀から現代に至るまでの「部屋」にまつわる作品を取り上げた展覧会です。時代が変遷するに伴い、部屋や、捉え方はどのように変わっていったのか。部屋や部屋でくつろぐ家族を描いたナビ派の画家、ピエール・ボナールから、自分のアトリエを撮影した写真家、ヴォルフガング・ティルマンスまで、様々な作品を手がかりに、パンデミックを通して変わった私たちの「部屋」のイメージを再構築しました。


会場 | ポーラ美術館
日程 | 2023年1月28日〜7月2日
主催 | 公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
公式サイト

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