公演の舞台裏 ―音響デザイナー編
中原 楽

中原さんが音響を手がけた『音楽堂のピクニック』の公演風景 写真 : 雨宮透貴

「舞台裏」で公演を支えるスタッフの「技術」をお伝えする本コーナー。今回は3月に音楽堂で行われた『音楽堂のピクニック』で音響を担当した中原楽さんが登場します。約70年前に前川國男が設計した公立施設としては日本で初めての音楽専用ホールの魅力を、多ジャンルの音楽を聴きながら、ピクニックをするように楽しめるイベントを通じて、中原さんが大切にしている音づくりについて伺いました。

聞き手・文 : 友川綾子

—音響の仕事を始めたきっかけを教えてください。

幼少期からピアノを習っていて音楽大学に進学しました。自分はプレイヤーにはならないという予感があって、裏方ならと思っていた大学時代に、音響の仕事と出会い、様々な現場に出かけて、ライブで音を扱う楽しさにはまっていきました。

—『音楽堂のピクニック』での音響の取り組みについて教えてください。

事前にビジョンを共有できていると、音に深みも出ますし迷いもなくなるので、この時も企画段階から打ち合わせをしていました。ディレクター側に「音楽堂そのものが鳴っている」ようにしたいという明確な意図がありました。音の響きが良い音楽堂の建築空間としての持ち味を活かせるよう、客席側にスピーカーを設置して、音に包まれる感覚になれるよう工夫をしたりしています。ただライブでは音を出してみるまでどうなるかわからないもので、最後は自分の耳が頼りです。

中原さんが10年来愛用する音づくりの相棒でもあるヘッドホン 写真 : 大野隆介

—音づくりで普段から気をつけていることはありますか?

空間との共存ですね。空間体験をつくっている気持ちも強く、音が空間のなかで活かされる響き方に気を配っています。あとは耳のケアです。耳は繊細で、体調を崩すと音の聴こえ方が変わってしまうんです。同じ機材を使用していても、誰が音響を担当するかで音の出方はまったく異なるものですが、私自身は演奏の音をそのまま拡張して聴いてもらいたいタイプですね。スピーカーを介さない生音のほうが気持ち良いと思ったら、たとえ自分の仕事がなくなっても「音響はいりません」と言い張っています(笑)。

音楽堂 室内オペラ・プロジェクト『シャルリー』公式サイト

写真 : 大野隆介

サウンドエンジニア 

中原 楽[なかはら・らく]


洗足学園音楽大学 作曲専攻シンセサイザー科卒業。
スピーカーメーカー、音響会社を経て、2015年ルフトツークにて音響事業部設立。多分野にわたり独自の音響空間を構築。フジロックでもサウンドデザインを手がける。

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